使徒22:30-23:30

“勇気を出してローマでも主を証しせよ”  内田耕治師

パウロのローマ宣教は主が道を備え、彼をそこに導いた神のみわざでした。ローマへの道が備えられるためにローマ帝国の権威は大きな役割を果たしました。国でさえ「あなたに益を与える神のしもべ(ローマ13:4)」なのです。パウロの場合、それはパウロがユダヤ人に殺されかけたときローマ軍が彼を助けたことから始まりました。その後ローマ軍を代表する千人隊長が特にパウロを助けました。千人隊長にはパウロのことで2つの役目がありました。1つはパウロを取り調べることであり、もう1つはパウロを保護することでした。初め千人隊長はどうしてパウロがユダヤ人に訴えられ命を狙われるのかわからず、その理由を調べるためにユダヤ人の議会に立たせました。その結果は、パウロが自分は死者の復活を信じるパリサイ人ですと言ったことがキッカケでパリサイ人とサドカイ人の神学論争になってその場は騒然となり、パリサイ人でパウロを弁護する者達も現れました。結局、千人隊長の目には、パウロはユダヤ人の律法解釈のことで非難されているだけで何も罪を犯していないことがわかり、ローマ市民である特権階級のパウロの保護に徹することになりました。

神学論争で紛糾したユダヤ人の議会でその混乱に乗じてパウロに暴行を加える暴徒が現われる恐れがありましたから、千人隊長は兵士達を送って力ずくでパウロを引きずり出して安全な兵営に連れて来ました。次にパウロを殺すまでは何も飲み食いしないと誓う40人以上の暗殺集団が出てきましたが、幸いなことにその計画をパウロの姉妹の子が耳にして、それを千人隊長に知らせると、すぐに対応してくれて、何と歩兵200人、騎兵70人、槍兵200人という厳重な警備をつけて安全なカイザリヤに送り出してくれました。そしてカイザリヤの総督のもとに送られたことがやがてローマへの道を開くことになりました。当時のローマ帝国は、今の日本と同じように多神教で偶像礼拝が盛んな国であり、少し後にはキリスト者を迫害する国になりましたが、神はそのようなローマをしもべとして用いてパウロのローマへの道を開かせ、彼のローマ宣教に協力させたのです。

ところで、神はパウロだけでなく私達の回りにも益を与えてくれる神のしもべを置いています。パウロの場合と同じように国や地方自治体は税金を取るけれども私達に益を与えてくれる神のしもべです。それだけではありません。よく回りを見たら私達の必要を満たしてくれるしもべ、知恵や知識を与えてくれるしもべ、協力者してくれるしもべ、助け手として励まして支えてくれるしもべがいます。様々な神のしもべの存在に気がつけば、自分がいかに恵まれているかがよくわかりますが、神のしもべが自分の回りにたくさんいることに気づいて、そんなしもべを与えて下さった神に感謝し、神の御名を崇めることが私達の役目です。

日本人は目に見えるものを大切にする傾向があるので、“皆さんのおかげで”と自分に益をもたらすしもべには感謝しても、しもべを与えて下さった目に見えない神には感謝も賛美もささげません。けれども、私達は、私達のためにいろんなしもべを遣わし、益を与え、良くして下さる神と、さらに永遠の救いを与えて下さる神の御子イエスキリストも知っています。だから。人々への感謝とともに神とその御子への感謝と賛美も表していきたいものです。