ダニエル2:29-49、ルカ19:10
“秘密を明らかにする天の神” 内田耕治師
古代メソポタミアの王は絶対的な権力や人を生かし殺す権限を持ち、神格化され神々の次に偉い存在だったが、聖書は神格化のベールを取り除いて弱さを抱えた人間としてネブカドネツァルを描いている。彼はカルケミシュでエジプト軍を撃破し、アッシリアを滅ぼし、中東世界を支配下に置く大きな手柄を立てて父の後を継いで王になった。王になって2年目の彼はある夢を見て眠れない夜を過ごした。彼は呪法師、呪文師、呪術者、カルデア人(占星術師)を呼んでその夢の解き明かしを頼む。しかも夢を秘密にして“まずその夢を当ててから解き明かせ”と命じた。そんなことは無理と言われると、激怒してヒステリックになり“バビロンの知者達をみんな殺す”と言い出し、関係のないダニエル達まで巻き添えになった。家来達は心の中では“王は変だ”と思っても口答えできない。もししたら自分の命が危うくなるから。親衛隊長アルヨクは王の命令でダニエルを殺すために来たが、「どうして?」と尋ねるダニエルに事の次第を知らせ、ダニエルを殺さなかった。アルヨクでさえ“王は変だ”と思う家来の1人だ。王は神の前にも人々の前にも厄介者だった。
しかし神はそんなネブカドネツァルを見捨てず主の前にへりくだるよう導いた。その導きはダニエルがアルヨクから事の次第を聞いて勇気を出して王を訪問したことから始まる。まだ17歳の彼は王と話し合い、奇跡的に時間の猶予を得ることができた。3人の友達と心を合わせて祈ると、夜の幻のうちに秘密が明らかにされ、早速、アルヨクを通して王に会い、夢とその解き明かしを語った。夢の解き明かしには、高ぶるネブカドネツァルを主の前にへりくだらせる神のご計画があった。権力者は自分の国がいつまでも続くのではないことを知りながら、末長く続くことを願い、それを誇りにしたがる。けれども、第一の国バビロンは滅んで第二の国が起こり、第二の国が滅んで第三の国が起こり、第三の国が滅んで第四の国が起こる。栄枯盛衰を示すことで王をへりくだりに導いた。次に第一から第四まですべての国を粉々に砕く石がある。国は起こっては滅びるものだが、その石は永遠に続く。「人手によらずに切り出されたもの」石は人間ではなく神が造る国を表す。「この王たちの時代に、天の神は1つの国を起こされます。その国は永遠に滅ぼされることがなく」この国はキリストを信じる者のうちに形造られ広がる神の国だが、当時はそこまで示されていなかった。
「あなたがこの秘密を明らかにすることができたからには、あなたがたの神こそ、神々の中の神、王たちの主、また秘密を明らかにする方であるに違いない」ネブカドネツァルはまだ多神教的な神観であり、唯一まことの神を信じたとは言えないが、少なくともダニエルが信じるイスラエルの神は他の神々とは違う特別な存在だと感じたようだ。これは日本のような多神教的な世界での宣教の現実に通じることだ。私達は唯一の神を伝えるが、私達が語るみことばを聞く人々は多神教的な神観だから、唯一の神をいろんな神々の中の1つとして受け止める。だから“キリスト教を信じると言いながら仏教も信じる”と言う人が出て来る。困ったことだが、ネブカドネツァルのようにキリストを他の神々とは違う特別な存在だと思うなら、全く関心のない人達と比べて唯一の神に向かって一歩前へ進んでいる。信仰に至るまでにまだ道のりがある。その道のりのために祈り、励まし、忍耐してみことばを伝える必要があるが、「人の子は、失われた者を捜して救うために来た」と語ったイエス様と同じように困ったことを言う人も失われた者の1人だから祈って導き続けよう。