ルツ記3章

“あなたの翼でおおって下さい”  内田耕治師

 

“翼でおおう”(覆いを広げる)とは、求婚(プロポーズ)のことだ。普通プロポーズは男性が女性にするものだが、女性のルツが男性のボアズにプロポーズした。それによって彼らは結婚に導かれた。ナオミがモアブの地から帰って来たとき、夫エリメレクも2人の息子も召されて、しかも子供がいなかった。けれども亡き息子の妻ルツがいた。買い戻しの権利のある親類のだれかが彼女を娶り、子供ができればエリメレク家の名前を残すことができる。だからナオミは自分の所有地を買い取るだけでなくルツを娶ってくれる人が現れることを待ち望んでいた。

それはルツの幸せのためだった。ナオミはルツの身の落ち着く所を探す責任を感じていた。ルツが計らずもボアズの畑で落ち穂拾いをしてボアズに出会い、2人の間に愛情が芽生え、しかも彼が買い戻しの権利がある親類の1人であることにナオミは希望を寄せた。けれども、若いルツに比べてかなり年を取ったおじさんのボアズは自分の年を気にして気後れし、好きなのに“好きだ”とは言えず、関係はそれ以上進展しない。せっかくのチャンスを逃してしまう。それに気づいていたナオミは2人の関係を進展させるためにルツのほうからプロポーズさせる大胆な賭けに出た。

ボアズが打ち場で大麦のふるい分けをして飲み食いして寝た後、ルツが気づかれないようにその側に行って寝ることである。ルツはナオミの言う通りにしてプロポーズした。それによって状況は進展したが、ボアズはそのプロポーズを一旦据え置きにした。自分よりも近い買い戻しの権利のある親類がいたからである。もし自分よりも近い親類が買い戻してくれるなら買い戻してもらいなさい、つまりその人と結婚しなさいという冷めた言い方をボアズはした。

好きな女性から言い寄られたら有頂天になり飛びつくのが男性だ。ボアズも男だからそういう弱さがあっただろうが、彼は努めて情熱を抑えてみこころを聞こうとした。その背後には結婚が神のみこころ据え置きにしても必ず後で結婚に導かれるし、みこころでないなら結婚には導かれない、いずれにせよ神は最善を行って下さるという信頼があった。このあり方は私達に神のみこころを聞くとはどういうことかを教えてくれる。私達は自分の願望を神のみこころと思い込みやすい弱さがある。そうなるとそれ以上神のみこころを聞こうとしなくなる。ボアズがプロポーズを一旦据え置きにしたのはさらに神のみこころを聞くためである。

それは握りしめているものを一旦手放すことだ。アブラハムも同じだ。彼は年を取ってから与えられたイサクを握りしめていた。けれども、神は彼がイサクを一旦手放すために全焼のいけにえとして献げるよう命じた。彼が献げようとしたとき、神のみこころが鮮やかに示されてイサクは助かり、彼はますます神とともに歩めるようになった。ボアズとアブラハムと問題は異なるが、神のみこころを聞くために一旦自分が握りしめていたものを手放すという点では同じだ。私達もその信仰生活の中でボアズやアブラハムと同じように自分が握りしめているものを一旦手放すように導かれる。手放すならば、私達は神のみこころを聞く姿勢ができて主のみこころがよく分かり、ますます主とともに歩めるようになる。そのような歩むを目指そうではないか。